こちら神保町「銭湯特集・その1/すずらん湯」
昭和の時代、神保町地区には多くの銭湯がありました。銭湯は我々の生活の楽しみでもありました。
「こちら神保町」では、神保町地区の銭湯を特集する新企画に取り組むことになりました。
そこで、今回は、今から約40年前まで神保町一丁目町会にあった「すずらん湯」をご紹介します。
紹介するにあたっては、すずらん湯の経営者、山村様のご協力をいただきながら取りまとめました。
名称(屋号)の由来:すずらん通りの傍にあったため、「すずらん湯」がよいでしょう、と神田明神でつけて頂きました。
所在地:千代田区神田神保町一丁目29番地
沿革概要:第二次世界大戦中、富山に疎開していました。
終戦後に上京して司町、菊坂などで営業していましたが、
昭和25年、戦災で全焼した「港湯」の焼け跡に「すずらん湯」を新築して営業を始めました。当時は、洗い場がお客さんでいっぱいになったものでしたが、夜間人口の減少や内風呂の普及、人件費の高騰などで経営が厳しくなりました。
そして昭和48年には、石油ショックや入浴のお客様がいない時間がある等、とうとう10月に暖簾をおろすことにしました。
区から公衆浴場への助成を計画事業化してくれるなどの支援策もあったのですが、それでも成り立たつ見込みがなかったので、この区の助成もお断わりし、廃業となりました。
戦後の燃料不足、水不足、人手不足の荒波を乗り切ってきたのですが残念なことです。
特 徴:集英社や小学館が近いので、時々撮影に利用されましたし、多くの著名人にも利用されていました。
経営者コメント:山村氏談
町内のランドマーク的存在でしたし、「すずらん湯」をご利用される方々と気軽に話ができないことが、とても寂しかったです。
NHKの朝倉アナウンサーに「すずらん湯」のインタビューを受けたこともありました。
すずらん湯の跡地に建設した現在の貸しビルは、マンガ「こち亀」(第6巻P.191)にも登場しています。また、このマンガの中に出てくる堀内さんは現集英社社長の堀内丸恵氏のことです。